民泊の建築基準法における用途変更とは|要件から手続きまで徹底解説

2024.04.23申請・法律

民泊の建築基準法

民泊にはさまざまな形態での運用が可能ですが、いずれの形態においてもお客様の安全を確保しなければなりません。

耐震や耐火など、民泊の利用中にトラブルに巻き込まれないように、最適な設備が必要となります。

また、トラブルが発生した場合でも、早急に対応できるように、必要なものを必要な場所に必要な数だけ用意しましょう。

本記事では、民泊の建築基準法における用途変更について、要件から手続きまで徹底解説します。

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民泊運営を始める3つの形態

民泊運営には、下記のように「旅館業法」「民泊新法」「特区民泊」の3形態があります。

 

旅館業法

旅館業法による民泊運営は、ホテルや旅館などの宿泊施設に近い運用となります。

年間の営業日数に制限がなく、売り上げが立ちやすい一方、旅館業法の許可を得なければ運営することができません。

 

民泊新法

民泊新法による運営を行う際には、必要な書類をそろえて、役所に届け出を出したあとに許可を得ることで運営することができます。

許可がおりるまでのスピードが速い特徴がありますが、年間営業可能日数が180日であるため、収益に限界があります。

 

特区民泊

特区民泊とは、国が指定した国家戦略特区のなかで、民泊をしても良いと自治体が特別に認めたエリアで運営する民泊です。

一般的な火災報知機や消火器があれば運営できますが、必ず2泊以上の滞在が求められる点には注意が必要です。

 

建築基準法の要件

建築基準法の要件

建築基準法とは、国によって下記のように定められている法律であり、国民の財産や生命の保護を目的としています。

  • この法律は、建築物の敷地、構造、設備および用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康および財産の保護を図り、もつて公共の福祉の増進に資することを目的とする。

 

たとえば、地震で倒壊しそうだったり、火災が発生しやすかったりするような家屋は、財産や生命が保護されているとはいえません。

そのような家屋は安全とはいえず、民泊であればお客様を生命の危機にさらしてしまうことになります。

建築基準法は、国民の財産や生命を保護するための、最低限のルールといえます。

対象となるものは建物だけではなく、敷地や設備、構造、用途などです。

どのような用途でその土地や建物を使用するのか、建物の床面積や建築面積の上限はどれくらいなのかなどが含まれます。

そのため、日常生活を送る場合と、民泊として運営する場合では建築基準法においては審査基準が異なるのです。

一般的に、民泊などお客様に滞在してもらって収益を得るような宿泊施設は、一般家屋よりも厳しい審査基準が設けられています。

自治体によっては、建築基準法に則って、より厳しい条件を課しているところがあります。

いずれも、お客様の財産や生命、および施設の保護が目的であることから、その条件に則っていなければなりません。

また、建築基準法のなかには「用途地域」という概念があります。

こちらは特定の地域に住宅や工場、宿泊施設など用途が異なる建物が混在することを防ぐものです。

住宅街に工場や宿泊施設があると、騒音や多くの人で混雑することが考えられるため、近隣住民とのトラブルに発展します。

用途地域によって民泊ができる・できないが異なるため、民泊運営の際には事前に確認しておきましょう。

ただし、用途地域であっても、先述した特区民泊であれば、運営することができます。

 

民泊を始める前に知っておきたい建築基準法の基礎知識

建築基準法の基礎知識

下記にて、民泊を始める前に知っておきたい建築基準法の基礎知識をご紹介します。

 

建物の用途

街中を見回してみると、住宅やオフィスビル、ホテルなどさまざまな建物を目にすると思います。

これらは外観や用途が異なり、法律でも細かく分類されます。

建築基準法においては、学校や工場といった種類は「用途」によって分けられています。

宿泊施設においては、「旅館・ホテル」か「居宅・共同住宅」の2つに分かれます。

「旅館・ホテル」は旅館業許可が取れている宿泊施設であり、営業できる地域が限られています。

一方、「居宅・共同住宅」は一般的な住宅と同様の扱いであり、民泊新法や特区民泊などが含まれます。

 

旅館業許可

旅館業の許可が得られれば365日営業することができるため、高い収益が期待できます。

しかし、下記のように旅館業の許可が取れる地域と、取れない地域があるため注意が必要です。

 

旅館業の許可を取得できる地域

  • 第一種住居地域
  • 第二種住居地域
  • 準住居地域
  • 近隣商業地域
  • 商業地域
  • 準工業地域

 

旅館業の許可を取得できない地域

  • 第一種低層住居専用地域
  • 第二種低層住居専用地域
  • 第一種中高層住居専用地域
  • 第二種中高層住居専用地域
  • 工業地域
  • 工業専用地域

 

建物の「用途変更」とは

先述の通り、民泊を運営する際には建築基準法に則っており、そのなかに含まれる「用途」が最適でなければなりません。

既存の住宅を民泊として運営する際には、生活を送ることから利用者に提供することへと目的が変わります。

このことを「建物の用途変更」といい、「居宅・共同住宅」から「旅館・ホテル」に変更しなければなりません。

用途変更の際には「用途変更確認申請」という書類を、自治体の窓口に提出する必要があります。

その際、自己判断で記載し、その内容が間違えていると後々の修正処理に多くの時間と費用を要してしまいます。

そのため、用途変更を行う際には建築士など、建物に関する専門家に相談しながら進行することをおすすめします。

自治体では、用途変更する予定の土地が、変更後の建築基準法に則っているのかなどの確認を行います。

また、旅館業法のなかには、学校や福祉施設などの周囲約100m区内で運営してはいけないというものがあります。

提出された書類や図面のほかに、地図なども確認しながら問題がないかの判断を下します。

問題がないと判断されたときに、はじめて建物の用途変更に関する許可を得ることができ、民泊を運営できるようになります。

 

建築基準法の一部改正による民泊運営の緩和

近年では訪日外国人やインバウンド、2025に開催予定の万博などにより、宿泊施設の不足が懸念されています。

そこで、2018年6月に建築基準法が、民泊開業を後押しする形で改正されました。

当改正の目的は先述した宿泊施設の確保だけではなく、日本に多くある空き家の活用方法が挙げられます。

民泊として運営するためには用途変更や建築基準法に準じている必要がありますが、空き家を活用して収益化を図ることができます。

また、当改訂によって、一般家屋でも民泊開業がしやすくなった点も特徴といえます。

下記、建築基準法の改定内容の一例です。

  • 3階建てで200㎡未満の場合、壁・柱等を耐火構造とする改修は不要である
  • 200㎡以下の他用途への転用は、建築確認手続き不要である

 

民泊運営で用途変更が必要なケース

民泊運営で用途変更が必要なケース

下記のようなケースでは、民泊運営で用途変更が必要となります。

  • 人の居住用に提供されている家屋や別荘などを含む、「住宅」と定められているもの
  • 集合住宅のひとつであり、1棟の建物に複数の住戸が存在している「長屋」と定められているもの
  • 1棟の内部が複数の住居に仕切られている、マンションやアパートのような「共同住宅」と定められているもの
  • 学生や社会人などが利用する寮のように、「寄宿舎」と定められているもの

 

用途変更の手続きについて

用途変更の手続きについて

下記にて、用途変更の手続きについてご説明します。

 

1.  建築基準法の確認

民泊を開業する建物が既存の建物である場合、建物が民泊を運営するために必要な建築基準法の条件を満たしているかを確認します。

建築基準法を満たしていない場合、「既存不適格建築物」という判断が下され、建築基準法に則った改修工事が必要となります。

新築の建物の場合、最新の建築基準法に則って建てられるため、改修工事は不要の場合が多いです。

法律が回収されたときなどは既存不適格建築物となりやすいため、適宜改修工事が必要となります。

 

2.  用途地域の確認

民泊を運営する地域が、民泊を運営しても良いのかといった用途地域であることを確認します。

用途地域は都市計画法と呼ばれる法律で、住宅地、商業地、工業地などの種類に分けられます。

そのなかでも、民泊を含めた「ホテル・旅館」などの建物は第一種住居地域でしか運営することができません。

特定の地域であれば特区民泊が認められているため、あわせて確認しておきましょう。

 

3.  立地の確認

先述の通り、旅館業法のなかには学校や福祉施設などの周囲約100m区内では運営してはいけません。

そのため建築基準法や用途地域を満たしていても、これらの施設の近くにある場合は民泊を運営できないことがあります。

また、立地については法律だけではなく、自治体がそれぞれ制定していることがあるため、あわせて確認しておきましょう。

立地は近隣住民の安全性や、景観の維持といったさまざまな目的で制定されています。

 

4.  図面の確認

用途変更を行う際には、建築図、設備図、構造図など建物や土地に関するさまざまな図面の提出が求められています。

確認申請とほとんど同じ書類が必要ですが、民泊で使用する建物の使用面積が合計200平方メートル以下の場合、確認申請は不要です。

書類が不足していたり、不備があったりすると再提出を求められるほか、申請がおりません。

そのため、建築士など不動産の専門家に相談して、サポートを受けながら申請することをおすすめします。

 

5.  費用の確認

用途変更の際には図面やさまざまな資料のほかに、申請手続きに関する費用が必要となることがあります。

立地や床面積などの条件により価格が異なるため、自治体窓口に必要となる費用を確認しておきましょう。

リフォームや回収などを行う場合は高額な費用が必要となるため、ある程度の貯蓄、ローンによる融資を受ける必要があります。

書類に不備がなく、建築基準法や旅館業法の条件を満たしているときに費用を支払うことで、民泊を運営することができます。

 

おわりに

本記事では、民泊の建築基準法における用途変更について、要件から手続きまで徹底解説しました。

建築基準法は国民の財産や生命の保護を目的としている法律であり、民泊だけではなくすべての建物が対象です。

民泊を始める際には、用途変更や営業可能な土地なのかを確認しておき、自治体窓口に書類を提出する必要があります。

個人で行うとミスやヌケモレが発生しやすいため、建築士などの専門家に相談してサポートを受けながら民泊申請を行いましょう。

 

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大阪民泊清掃代行編集部

【民泊運営専門家】榊原 啓祐(さかきばら けいすけ)
ハウスクリーニングや壁紙再生事業でフランチャイズ本部事業等を立ち上げ、僅か5年で400店舗以上を出店。民泊事業には2015年8月に参入し、現在では民泊運営と共に、リゾート地での貸別荘もスタート。ハウスクリーニングの経験から、民泊清掃の第一人者でもあり、これからの民泊業界を牽引する若き経営者。

【民泊運営アドバイザー】田尻 夏樹(たじり なつき)
バチェラー3に出演。温泉ソムリエの資格を持ち、観光系インフルエンサーとしての経験から宿泊業、民泊業に参入。 地域の魅力やおすすめスポットを発見し、快適な滞在に関する情報の発信も。