民泊新法(住宅宿泊事業法)とは?重要なポイントや制度の違いを解説
2024.01.30申請・法律近年では相続や譲渡などによって取得した不動産や物件を、民泊施設として利用する方が多くなりました。
使用していない不動産は固定資産税や都市計画税といったランニングコストが発生するため、収益化を考えるのは妥当といえます。
しかし、民泊として活用する際には、安全面や衛生面といったトラブルを避けなければならないため、注意が必要です。
そのようなトラブルを避けるために、平成29年6月に「民泊新法」と呼ばれる法律が成立しました。
本記事では、民泊新法(住宅宿泊事業法)について、重要なポイントや制度の違いについて解説します。
民泊新法(住宅宿泊事業法)とは?
民泊新法(住宅宿泊事業法)とは、旅行者に対して民泊を貸し出す事業者を対象とした法律です。
具体的には下記の3事業者が対象となるものであり、それぞれで役割や義務が決められています。
- 住宅宿泊事業者 :住宅宿泊事業法第3条第1項の届け出をして、住宅宿泊事業を営む者
- 住宅宿泊管理業者 :住宅宿泊事業法第22条第1項の登録を受けて、住宅宿泊管理業を営む者
- 住宅宿泊仲介業者 :住宅宿泊事業法第46条第1項の登録を受けて、住宅宿泊仲介業を営む者
これらの違いについては、次の項で詳しくご説明します。
民泊新法の対象事業者
こちらでは、民泊新法の対象事業者についてそれぞれの違いをご説明します。
住宅宿泊事業者
住宅宿泊事業者とは、旅館業法第3条の2第1項に規定する営業者以外が、宿泊料を受けて住宅に人を宿泊させる事業者を指します。
旅行者を宿泊させることができる日数が、1年間で180日を超えてはいけないように決められています。
住宅宿泊事業者になるためには、都道府県知事などに当該事業を営む旨の届け出をしなければなりません。
また、届け出の際には諸条件を満たしていることを証明するために、さまざまな書類や住宅の図面などを添付する必要があります。
住宅宿泊事業者の役割
住宅宿泊事業者には、下記の役割が課せられています。
- 宿泊者の衛生の確保
- 宿泊者の安全の確保
- 外国人観光旅客である宿泊者の快適性及び利便性の確保
- 宿泊者名簿の管理
- 周辺地域への悪影響の防止
- 苦情等への対応
- 住宅宿泊管理業者への委託
- 住宅宿泊仲介業者への委託
- 標識の掲示
- 都道府県知事への定期報告
要約すると、住宅宿泊事業者は宿泊者の安全性と快適性を維持しつつ、近隣住民とのトラブルにも対応することが役割といえます。
参考ページ:民泊制度ポータルサイト「住宅宿泊事業者編」
住宅宿泊管理業者
住宅宿泊管理業者とは、住宅宿泊事業法第11条第1項に規定する委託を受け、宿泊施設を運営して収入を得ている方を指します。
また、住宅宿泊管理業者の登録は5年ごとに更新を受ける必要がある点にも注意しましょう。
住宅宿泊管理業者の役割
下記、住宅宿泊管理業者の役割になります。
- 誇大な広告の禁止
- 不当な勧誘等の禁止
- 管理受託契約の締結前及び締結時の書面の交付
- 住宅宿泊管理業務の再委託の禁止
- 住宅宿泊管理業務の実施
- 証明書の携帯等
- 帳簿の備え付け等
- 標識の掲示
- 住宅宿泊事業者への定期報告
宿泊管理業務の実施については住宅宿泊事業法第5条から10条に規定されている、下記を順守しなければなりません。
- 宿泊者の衛生の確保
- 宿泊者の安全の確保
- 外国人観光旅客である宿泊者の快適性及び利便性の確保
- 宿泊者名簿の備え付け等
- 周辺地域の生活環境への悪影響の防止に関し必要な事項の説明
- 苦情等への対応
こちらについては住宅宿泊事業者と同様であることから、必ず守らなければならない要素であるため理解を深めておきましょう。
参考ページ:民泊制度ポータルサイト「住宅宿泊管理業者編」
住宅宿泊仲介業者
住宅宿泊仲介業者とは、旅行業法第6条の4第1項に規定する、民泊を運営する旅行業者以外の方を指します。
具体的には下記を行っている方を指すものであり、運営代行なども含まれます。
- 宿泊サービスの提供を受ける際、代理して契約を締結・媒介・取り次ぎをする
- 宿泊者に対して宿泊サービスを提供する際、代理して恵沢を締結・媒介・取り次ぎをする
こちらは旅館やホテルなどは対象外で、運営するためには旅行業法に基づく旅行業者として登録しなければなりません。
住宅宿泊仲介業者は観光庁長官の登録を受ける必要があり、登録時には住宅宿泊仲介業者登録申請書に必要事項を記載します。
また、登録後も5年ごとに更新を受ける必要があり、更新をしなかった場合は仲介業を行うことができません。
住宅宿泊仲介業者の役割
下記、住宅宿泊仲介業者の役割です。
- 住宅宿泊仲介業約款
- 住宅宿泊仲介業務に関する料金の公示等
- 不当な勧誘等の禁止
- 違法行為のあっせん等禁止
- 住宅宿泊仲介契約の締結前の書面の交付
- 標識の掲示
違法な物件が民泊仲介サイトに掲載されている場合、速やかにその物件を削除することが求められます。
参考ページ:民泊制度ポータルサイト「住宅宿泊管理業者編」
民泊新法(住宅宿泊事業法)で押さえたい重要なポイント
下記にて、民泊新法(住宅宿泊事業法)で押さえたい重要なポイントをご説明します。
届け出手続きが必要
民泊新法では、運営形態にかかわらずさまざまな役所や施設に届け出手続きが必要になります。
下記、先述した3者の登録先と必要事項のまとめです。
- 住宅宿泊事業者 :都道府県知事などに当該事業を営む旨の届け出
- 住宅宿泊管理業者 :国土交通大臣に住宅宿泊管理業者登録申請書に必要事項を記載し、登録を受ける
- 住宅宿泊仲介業者 :都道府県知事などに当該事業を営む旨の届け出
また、それぞれで登録を受けるためには下記の情報が必要になります。
- 商号・名称・氏名・住所
- 法人の場合は役員の氏名
- 未成年者の場合は法定代理人の氏名・住所
- 貸し出す住宅の所在地
- 住宅宿泊管理業者の商号など
- 住宅図面
- 誓約書
- 住宅宿泊事業法施行規則 など
民泊事業を行うための要件を満たす住宅
民泊事業を行うためには、宿泊者の快適性や安全性を確保するために、下記の設備や居住の要件を満たしている必要があります。
設備要件
宿泊施設には台所や浴室、トイレ、洗面設備といった基本的な生活を行うための設備が必要です。
たとえば、台所やトイレがない家屋は快適性や安全性がないことから、民泊施設として利用することができません。
居住要件
民泊事業を行うためには、下記の居住要件を満たしていなければなりません。
- 人の生活の本拠として使われている家屋である
- 入居者募集が行われている家屋である
- 常に所有者の居住のように供給されている家屋である
これらの条件を満たしていれば、一軒家でもマンションでも民泊施設として届け出ることができます。
民泊運営が可能なエリアを確認
実は、エリアによっては民泊運営ができないところがあることをご存知でしょうか。
民泊新法によって、地方自治体が民泊運営をしても良いかどうかを判断することができます。
しかし、一部の地域では「民泊特区」として、民泊を運営することが許可されていることがあります。
民泊特区では本来の最低宿泊日数が6泊7日だったのに対して、2泊3日に緩和されているなどの違いが挙げられます。
また、常駐させる従業員が不要だったり、規制や制度の緩和、税制面などさまざまな面で優遇を受けたりすることができます。
営業日数180日ルール
民泊新法では、家主居住型や家主不在型にかかわらず、年間営業日数が180日以内に制限されています。
民泊は旅館やホテルなどとは異なり、あくまで住宅を貸し出して宿泊させることが要因となります。
住宅は長期間同じ場所で生活をするものであり、1年間宿泊施設として利用するものではないと考えられています。
そのため、民泊を運営して収益を上げても、上限がある点には注意しておきましょう。
住宅宿泊管理業者への委託
住宅宿泊事業者は、管理業務を住宅宿泊管理業者に委託することが義務付けられています。
しかし、民泊の所有者自身が住宅宿泊管理業者として管理業務を行う場合や、家主居住型の場合、委託は不要です。
民泊は住宅である以上、近隣住民とのトラブルが発生した際は迅速に対応しなければなりません。
24時間365日、いつでも駆け付けることはできないと判断したときは、住宅宿泊管理業者に委託する必要があります。
民泊新法・特区民泊・旅館業法、それぞれの制度の違い
こちらでは、民泊新法と先ほどから少し申し上げている特区民泊、旅館業法の違いについてご説明します。
民泊新法 | 特区民泊 | 旅館業法 | |
所管省庁 | 国土交通省
厚生労働省 観光庁 |
内閣府
厚生労働省 |
厚生労働省 |
許認可等 | 届け出 | 認定 | 許可 |
住専地域での営業 | 可能 | 可能 | 不可 |
営業日数の制限 | 年間提供日数180日以内 | 2泊3日以上の滞在が条件 | 制限なし |
宿泊者名簿の作成・保存義務 | あり | あり | あり |
玄関帳場の設置義務
(構造基準) |
なし | なし | なし |
最低床面積
(3.3平方メートル/人)の確保 |
最低床面積あり | 原則25平方メートル以上/室 | 最低床面積あり |
衛生措置 | 換気、除湿、清潔等の措置、定期的な清掃等 | 換気、採光、照明、防湿、清潔等の措置、使用の開始時に清潔な居室の提供 | 換気、採光、照明、防湿、清潔等の措置 |
非常用照明等の安全確保の措置義務 | あり | あり | あり |
消防用設備等の設置 | あり | あり | あり |
近隣住民とのトラブル防止措置 | 必要 | 必要 | 不要 |
不在時の管理業者への委託業務 | 規定あり | 規定なし | 規定なし |
民泊新法と特区民泊・旅館業法における大きな違いとして、営業日数の制限が挙げられます。
民泊新法では年間提供日数が180日と決められているのに対して、特区民泊では2泊3日以上、旅館業法では制限がありません。
また、特区民泊に限り、最低床面積が原則として25平方メートル以上が求められています。
その他については大きな違いはありませんが、いずれの施設においても高水準の衛生措置や消防設備などが必要です。
宿泊者が快適に過ごせるように、法令を順守したうえでこれらの設備を充実させておきましょう。
当社コラムページ:大阪で特区民泊を始めるには?必要になる手続きや申請方法を解説!
参考ページ:民泊制度ポータルサイト「はじめに「民泊」とは」
民泊事業を経営する際の注意点
民泊事業を経営する際には、下記のポイントに注意しましょう。
消防設備の設置
民泊施設では一般家庭で使用する消防施設よりも高性能なものが求められます。
民泊において消防法上は特定防火対象物に該当し、多額の費用が必要となります。
特定防火対象物とは、不特定多数の人が出入りする建物や避難などが困難と予想される施設を指します。
たとえば、民泊以外ではホテルや店舗といった施設が挙げられます。
近隣住民への配慮
民泊する際には、事前に説明会を開くなどで近隣住民からの理解を得なければなりません。
第三者に貸し出しているとはいえ、深夜まで騒音が発生するとその家主の持ち主にクレームが寄せられるものです。
近隣住民とのトラブルを防ぐためにも、宿泊者に対して細かいルールを設定して守ってもらうようにしましょう。
当社コラムページ:民泊の苦情やトラブル対策について|事前にできることや対処法を解説
おわりに
本記事では、平成29年6月に制定された民泊新法についてご説明しました。
民泊新法は旅行者に対して民泊を貸し出す事業者を対象とした法律であり、下記の3種類が含まれています。
- 住宅宿泊事業者
- 住宅宿泊管理業者
- 住宅宿泊仲介業者
民泊を運営する際には届け出だったり、住宅が特定の要件を満たしていたりする必要があります。
これから民泊を運営したいと考えている方は、民泊新法をしっかりと理解しておきましょう。
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【民泊運営専門家】榊原 啓祐(さかきばら けいすけ)
ハウスクリーニングや壁紙再生事業でフランチャイズ本部事業等を立ち上げ、僅か5年で400店舗以上を出店。民泊事業には2015年8月に参入し、現在では民泊運営と共に、リゾート地での貸別荘もスタート。ハウスクリーニングの経験から、民泊清掃の第一人者でもあり、これからの民泊業界を牽引する若き経営者。
【民泊運営アドバイザー】田尻 夏樹(たじり なつき)
バチェラー3に出演。温泉ソムリエの資格を持ち、観光系インフルエンサーとしての経験から宿泊業、民泊業に参入。 地域の魅力やおすすめスポットを発見し、快適な滞在に関する情報の発信も。
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