大阪で特区民泊を始めるには?必要になる手続きや申請方法を解説!
2023.11.06申請・法律大阪には関西国際空港があることから、日本人だけではなく多くの訪日外国人が訪れる都道府県です。
難波や梅田といった繁華街だけではなく、箕面大滝や大阪城、万博記念公園といったさまざまな観光地が観光客をもてなします。
京都や兵庫など主要都市にもアクセスがしやすいため、近年では空き家などを利用して大阪で民泊を始める方が多くなりました。
本記事では、大阪で特区民泊を始める際に必要となる手続きや申請方法を解説します。
特区民泊とは?
特区民泊とは、国家戦略特別区域法により指定された「国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業」を指します。
特区民泊の対象となるエリアでは旅館業法の適用が除外され、自由度が高い民泊業を運営することが可能となります。
しかし、特区民泊には最低滞在期間や構造設備の基準などが設けられています。
また、旅館業法が除外されているとはいえ、営業ができる地域に規制があることから、どこでも運営できるわけではありません。
勘違いされることが多いポイントとして、特区民泊は訪日外国人だけではなく、日本人も利用することができる点が挙げられます。
あくまで訪日外国人の滞在に適した土地であって、どのような方でもルールに則ることができれば宿泊・滞在が可能となります。
大阪で特区民泊が実施できる地域
下記、大阪府下で特区民泊が実施できる地域です。
- 大阪市
- 八尾市
- 寝屋川市
また、大阪市内については下記のいずれかに該当している必要があります。
- 第一種住居地域
- 第二種住居地域
- 準住居地域
- 近隣商業地域
- 商業地域
- 準工業地域
多くの人が集まる中央区や北区、天王寺区などは比較的自由な物件で特区民泊を始めることができます。
しかし、その他の区では床面積が3,000平方メートル超であるといった条件が定められているところがあります。
特区民泊が制定された背景は、年々増加する訪日外国人に対して宿泊施設の不足を補うことを目的としています。
一時はコロナウィルスの影響で減少しましたが、脅威が去ったあとは再び多くの訪日外国人を見かけるようになりました。
大阪府がビジネスチャンスを逃さないように、空き家や不動産などを利用して訪日外国人を受け入れるための施策といえます。
詳細は後述しますが、特区民泊にはさまざまな条件が課せられているため、どの物件でも民泊を運営できるわけではありません。
民泊条例とは
民泊条例とは、近年増加傾向にある民泊に関する条例であり、近隣トラブルの回避や健全なサービスを普及させることが目的です。
民泊のなかには安全面や衛生面が確保できていなかったり、騒音やゴミ出しといったトラブルが問題になったりしているところがあります。
下記、民泊条例に含まれる2つの要素です。
住宅宿泊事業法に関する条例
住宅宿泊事業法に関する条例は2018年6月に施行された法律であり、一般的には「民泊新法」と呼ばれています。
民泊新法の特徴は、ホテルや旅館ではなく住宅や家屋を宿泊施設として提供できる点が挙げられます。
ホテルや旅館などは、住宅街のような住宅専用地域には建てられないように法律で定められています。
使っていなかったり余っている部屋があったりする住宅を宿泊施設として利用することで、多くの観光客を招くことができます。
しかし、住宅専用地域に多くの観光客が押し寄せると、近隣の住環境が損なわれる可能性があります。
そこで、各自治体が地域の環境や事情に合わせて、住宅事業を行える地域や期間などを設けたのがこちらの条例です。
参考ページ:民泊制度ポータルサイト「住宅宿泊事業法(民泊新法)とは?」
国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業に関する条例
近年ではインターネットやアプリの技術が向上したことで、自宅や空き家をネットなどから観光客に貸し出す方が多くなりました。
しかし、個人間で宿泊施設の貸し借りを行うことは、旅館業法に抵触する可能性があるため、トラブルが付きまといます。
そのようなグレーゾーンを払しょくするために、こちらの条例が制定されました。
下記、国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業に関する条例に適用されない条件です。
- 国家戦略特別区域内であること
- 賃貸借契約およびこれに付随する契約に基づくものであること
- 使用期間が7~10日の範囲であること
- 居室は国家戦略特別区域法施行令12条3号を満たすこと
- 外国語の案内があること
- 事業の一部が旅館業に該当すること
参考ページ:内閣府ホームページ「旅館業法の特例について」
構造設備の基準
こちらでは、特区民泊や旅館業法、住宅宿泊事業法における構造設備の基準などについてご説明します。
旅館業法 (簡易宿所) |
国家戦略特区法 (特区民泊に係る部分) |
住宅宿泊事業法 | |
所管省庁 | 厚生労働省 | 内閣府 (厚生労働省) |
国土交通省 厚生労働省 観光庁 |
許認可等 | 許可 | 認定 | 届出 |
住専地域での営業 | 不可 | 可能 (認定を行う自治体ごとに、制限している場合あり) |
可能 (条例により制限されている場合あり) |
営業日数の制限 | 制限なし | 2泊3日以上の滞在が条件 (下限日数は条例により定めるが、年間営業日数の上限は設けていない) |
年間提供日数180日以内 (条例で実施期間の制限が可能) |
宿泊者名簿の作成・保存義務 | あり | あり | あり |
玄関帳場の設置義務 (構造基準) |
なし | なし | なし |
最低床面積、最低床面積 (3.3㎡/人)の確保 |
最低床面積あり (33㎡。ただし、宿泊者数10人未満の場合は、3.3㎡/人) |
原則25㎡以上/室 | 最低床面積あり (3.3㎡/人) |
衛生措置 | 換気、採光、照明、防湿、清潔等の措置 | 換気、採光、照明、防湿、清潔等の措置、使用の開始時に清潔な居室の提供 | 換気、除湿、清潔等の措置、定期的な清掃等 |
非常用照明等の安全確保の措置義務 | あり | あり (6泊7日以上の滞在期間の施設の場合は不要) |
あり (家主同居で宿泊室の面積が小さい場合は不要) |
消防用設備等の設置 | あり | あり | あり (家主同居で宿泊室の面積が小さい場合は不要 |
近隣住民との トラブル防止措置 |
不要 | 必要 (近隣住民への適切な説明、苦情および問い合わせに適切に対応するための体制および周知方法、その連絡先の確保) |
必要 (宿泊者への説明義務、苦情対応の義務) |
不在時の管理業者への委託業務 | 規定なし | 規定なし | 規定あり |
参考ページ:民泊制度ポータルサイト「はじめに「民泊」とは」
近隣住民へ説明会の開催
先述の通り、特区民泊を始める際には近隣住民に迷惑が掛からないように運営しなければなりません。
第三者に自宅や空き家などを貸し出していても、近隣トラブルに発展したときは物件の所有者に責任が問われることがあります。
そのため、特区民泊を始める前には、近隣住民に対して説明会を開催することが義務付けられています。
下記にて、近隣住民への説明会時に押さえておきたいポイントをご紹介します。
誰に対して、何を説明するのか?
説明会では、近隣住民に対して自分が所有する不動産を特区民泊の施設といて運用することを説明します。
特区民泊を運営する際は、対象となる不動産が隣の家と道路や公園を挟んだ10m以下の住民に対して説明が必要となります。
その際に同意を取る必要はありませんが、範囲内にいる住民に対して口頭または書類での周知を行います。
下記、特区民泊を運営する際に近隣住民に周知させる方法です。
説明会の実施
- 対象となる住民に対して説明会を実施する旨のポスティング
- 説明会の実施
- 不参加者に対しては別途説明の必要はありませんが、問い合わせには対応する必要はあります。
戸別訪問
- 対象となる全世帯に戸別訪問を行う
- 対面できた場合は、必要事項が記載された書面を用いて説明する必要があります。
- 対面できなかった場合は書類をポスティング
- 問い合わせがあった場合は都度対応
周知事項
下記、特区民泊を実施する際に近隣住民へ周知させる情報です。
- 特区民泊の実施を検討している方の名前(法人の場合は法人名と代表者名)
- 施設の名称・所在地
- 事業の概要
- 苦情・クレーム対応時の窓口
- 廃棄物の処理方法
- 火災などが発生した際の対応方法
- 騒音防止策
- ゴミの処理方法
特区民泊の認定申請の流れ
下記は特区民泊の認定申請を行う際の、認可を受けるまでの流れです。
事前相談
特区民泊に限らず、旅館業を運用する際には一般住宅よりも高度な防災機能を搭載する必要があります。
これから特区民泊を始める際は、物件の図面を持参して、区内の安全生活課と消防署に相談します。
民泊の事業計画の周知
区や消防署に事前相談をするタイミングで、近隣住民に対して先述した内容を記載した周知文書を作成し、配布します。
対象エリアによっては説明会が不要なところがありますが、ほとんどの場合は説明会が必要となります。
認定申請
説明会を実施し、近隣住民からの了承を得られたあとは認定申請書と添付書類、申請手数料を生活安全課に提出します。
下記、特区民泊の申請時に必要となる書類です。
- 住民票の写し
- 賃貸借契約およびこれに付随する契約に係る約款
- 施設の図面
- 近隣住民への周知を完了した旨の報告
- 近隣住民からの苦情、問い合わせに適切に対応するため体制や方法
- 施設を事業に使用するための正当な権利を証明する書類
- 消防法令適合通知書
現地調査
必要書類の提出後は区が審査を行い、承認を得たあとは生活安全課員が現地に立ち入って調査を行います。
問題があった場合、その問題点を解消してから再度立ち入り調査が行われます。
認定書の交付
立ち入り調査をクリアした際は、区から特区民泊を運営する認定書が送付されます。
認定書が届いてから特区民泊を運営することができるため、宿泊サイトに認定番号を入力し、集客を行いましょう。
特区民泊の申請に必要な書類
こちらでは、先述し特区民泊の申請に必要な書類について詳しくご説明します。
住民票の写し
特区民泊を運営する方の、3か月以内に発行された住民票の原本です。
市役所などで発行してもらうことができるため、事前に用意しておくことをおすすめします。
賃貸借契約およびこれに付随する契約に係る約款
こちらの書類は運用を開始したあとの利用者と貸主間で締結する契約書になります。
「貸主と借り主でどのような契約を締結するのか」を役所などで確認するために用いられます。
施設の図面
特区民泊の申請で必要となる施設の図面には、間取り・床面積・便所・浴室・台所・洗面所等の位置が明らかである必要があります。
近隣住民への周知を完了した旨の報告
これから特区民泊を運営するにあたり、どのように運営するのか、苦情窓口はどこなのかといった説明をしたことの証明書です。
施設の住所や事業の開始日時、事業の概要など特区民泊の運営に関するさまざまな情報を記載する必要があります。
近隣住民からの苦情、問い合わせに適切に対応するため体制や方法
特区民泊を運営すると、どれだけ注意をしても近隣住民とのトラブルや環境を崩してしまうことがあります。
そのような状況が発生したときを想定して、苦情窓口責任者の氏名、住所および連絡先を記載した書類が必要です。
施設を事業に使用するための正当な権利を証明する書類
前提として、特区民泊を運営する際には対象となる物件の所有者であることを正式に認められている必要があります。
こちらの書類は権利を証明する者であり、貸借人の場合や転居人の場合など、さまざまな形式が用意されています。
消防法令適合通知書
先述の通り、特区民泊として運用する不動産には、一般的な住宅よりも高級な防災設備が必要となります。
自動火災報知機や誘導灯、スプリンクラーといった必要な設備が取り付けられているのかといったことを証明します。
おわりに
本記事では、大阪府で特区民泊を始める際に必要となる手続きや申請方法について解説しました。
大阪で特区民泊ができる地域は大阪市、八尾市、寝屋川市です。
条例に則り、特区民泊の運営を承認してもらうためには下記の流れで申請を行う必要があります。
- 事前相談
- 民泊の事業計画の周知
- 認定申請
- 現地調査
- 認定書の交付
これから特区民泊の運営を検討している方は、事前に必要な書類や要件を満たしているのかについて調べておきましょう。
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【民泊運営専門家】榊原 啓祐(さかきばら けいすけ)
ハウスクリーニングや壁紙再生事業でフランチャイズ本部事業等を立ち上げ、僅か5年で400店舗以上を出店。民泊事業には2015年8月に参入し、現在では民泊運営と共に、リゾート地での貸別荘もスタート。ハウスクリーニングの経験から、民泊清掃の第一人者でもあり、これからの民泊業界を牽引する若き経営者。
【民泊運営アドバイザー】田尻 夏樹(たじり なつき)
バチェラー3に出演。温泉ソムリエの資格を持ち、観光系インフルエンサーとしての経験から宿泊業、民泊業に参入。 地域の魅力やおすすめスポットを発見し、快適な滞在に関する情報の発信も。
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