民泊新法(住宅宿泊事業法)と旅館業法の違いは?どちらを選ぶべき?

2024.08.26申請・法律

民泊新法(住宅宿泊事業法)と旅館業法

日常的に使用していない家屋や別荘も、一般家屋と同様に固定資産税などさまざまなランニングコストが発生します。

少しでもマネタイズをするために、民泊を運営して第三者に貸し出すことを検討している人は多いのではないでしょうか。

第三者を宿泊させて利益を獲得する施設のなかには旅館やホテルがありますが、これらは旅館業法に則っています。

本記事では、 民泊新法(住宅宿泊事業法)と旅館業法の違いについて、どちらを選ぶべきなのかとあわせて解説します。

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旅館業法と民泊新法(住宅宿泊事業法)の違い

旅館業法と民泊新法(住宅宿泊事業法)の違い

旅館業法と民泊新法(住宅宿泊事業法)には、下記のような違いがあります。

旅館業法 民泊新法(住宅宿泊事業法)
営業日数 制限なし 180日以下

特区民泊は制限なし

利用者の滞在期間 1泊2日から 1泊2日から

特区民泊は2泊3日から

建物用途 ホテル・旅館 共同住宅、寄宿舎、一戸建て、長屋
用途地域の制限 住居地域(第一種、第二種)、準住居地域、近隣商業地域、商業地域、準工業地域 低層住居専用地域(第一種、第二種)、中高層住居専用地域(第一種、第二種)、住居地域(第一種、第二種)、田園住居地域
居室の床面積 3.3平方メートル以上 なし

特区民泊は25平方メートル以上

消防機器の制限 特定防火対象物 自動火災報知機と誘導灯は設置義務あり
フロントの設置義務 原則なし なし
苦情受付の窓口 必要 不要

特区民泊では必要

立ち入り検査の有無 あり あり
申請方法 都道府県への許可申請 都道府県の保健所に届け出申請

 

それぞれの違いについて、下記にてご紹介します。

 

営業日数

旅館業法や特区民泊には営業日数に制限はありませんが、民泊新法では営業日数が180日以内に制限されています。

民泊新法の目的は空き家や空き室などの不動産を利用して、インバウンドや旅行者を受け入れることです。

営業日数に制限が設けられていることから、第三者への貸し出しと自己利用を両立させることができます。

しかし、民泊新法は営業日数に制限があることから、得られる収入に限界がある点には注意が必要です。

 

利用者の滞在期間

利用者の滞在期間については、旅館業法と民泊新法ともに1泊2日から利用できます。

ただし、大阪市・八尾市・寝屋川市のように特例措置が採用されている「特区民泊」については2泊3日以上と定められています。

大阪以外にも、東京都大田区や千葉市、新潟市、北九州市などが特区民泊に指定されています。

 

建物用途

建物用途

建物用途とは、その建物がどのような目的で使用するのかを決めるもので、建築基準法によって定められています。

旅館業法上での建物用とはホテル・旅館であり、これらの建物は特定の地域にしか建てることができません。

民泊新法における建物用途は共同住宅、寄宿舎、一戸建て、長屋であり、市町村に制限されていない限りどこでも開業できます。

 

用途地域の制限

用途地域の制限とは、建設できる建物や、建物の用途を制限するために定められたルールを指します。

「住居系」「商業系」「工業系」の3つのなかに、さらに13種類のエリアが含まれています。

旅館業法では住居地域(第一種、第二種)、準住居地域、近隣商業地域、商業地域、準工業地域内で運営が可能です。

民泊新法では低層・中高層住居専用地域(第一種、第二種)、住居地域(第一種、第二種)、田園住居地域、商業地域、工業地域などが対象となり、工業専用地域は民泊が禁止されています。

 

居室の床面積

宿泊施設の利用者は、旅行・利用中は快適に過ごしたいと考えており、そのためには一定以上の広さを持つ宿泊施設が必要です。

旅館業法では主に、旅館・ホテル営業として使用する際には、7㎡以上(ベッドを置く場合は9㎡以上)床面積が必要である旨が、旅館業法によって定められています。

民泊新法においては1人当たり3.3平方メートル以上の床面積が必要ですが、特区民泊は25平方メートル以上が必要です。

そのため、居室の床面積については旅館業法よりも特区民泊のほうが厳しいといえます。

 

消防設備の制限

所有している建物を第三者に宿泊施設として貸し出す際は、利用者の安全を確保するために消防設備の設置が必要です。

旅館業法では特定防火対象物という、一般的な住宅や防火対象物よりも厳しい条件の消防設備の設置が義務付けられています。

民泊新法では自動火災報知機と誘導灯は必ず設置しなければならず、特定の条件を満たしている場合には特定小規模施設用自動火災報知設備(通称:トクショウ)で問題ないことがあります。

尚、消火器については設置が義務付けられていません。

しかし、火災が発生した際に早急な消火を行うために、消火器は設置しておくことをおすすめします。

 

消防設備の設置基準は設けられていますが、所轄の消防署によって求められることが変わることもあったり、設置前に届け出る必要のある書類もあったりするため、必ず事前確認するようにしましょう。

 

フロントの設置義務

フロントの設置義務

宿泊施設におけるフロントは緊急時の対応や鍵の受け渡しなど、オーナーと利用者間でやり取りを行うために使われます。

10分程度でオーナーや職員などが駆け付けられる場合は、旅館業法・民泊新法ともにフロントの設置義務はありません。

所謂チェックインは必要になるため、タブレットなどを導入してセルフチェックインにしている宿泊施設も多いでしょう。

利用者の出入りや本人確認のためにビデオカメラなどの設置を求められることがあります。

ただし、各自治体の条例によってフロントの設置が制限されていることがあるため、こちらも必ず所轄の保健所へ事前に確認しておきましょう。

 

苦情受付の窓口

民泊を利用している際、部屋が汚れていたりお湯が出なかったりといった意見を利用者から相談されることがあります。

また、近隣住民から騒音やゴミ出しのルールを守らないなどの苦情を寄せられる可能性もゼロではありません。

このような意見や苦情に対応するために、宿泊施設を運営する際には苦情受付の窓口を設ける必要があります。

 

立ち入り検査の有無

立ち入り検査とは、危険だったり条件を満たしていなかったりしていないかを保健所の職員などが建物のなかに入って行う調査です。

申請時のそれぞれの旅館業法や特区民泊、民泊新法に則っている必要があり、これらを守らなかった場合は違反となり、業務改善命令や営業停止の対象となってしまうことがあります。

申請書類を提出後、営業開始前の宿泊施設を対象とした立ち入り検査も管轄の保健所にもよっては行われます。

 

申請方法

申請方法

旅館業法と民泊新法の申請先や申請方法は異なることもあるため、必ず該当するエリアを担当している窓口に連絡しておくようにしましょう。

必要書類に違いはありますが、旅館業法も民泊新法も保健所、消防署、環境局などへ書類を提出する必要はありますので、いずれも事前に確認しておくことが大切です。

提出後に実地調査が行われ、消防設備などに問題がなかったと判断されてから民泊運営を始めることができます。

関連ページ:民泊新法(住宅宿泊事業法)とは?重要なポイントや制度の違いを解説

 

民泊を無許可・未認定のまま運営してしまうと、旅館業法第10条に則り、最大6ヶ月の懲役もしくは100万円以下の罰金が科される場合があります。

そのため、民泊の運営を行う際は必ず保健所に届け出などを行い、許可を得てから運営しましょう。

 

おわりに

本記事では、 民泊新法(住宅宿泊事業法)と旅館業法の違いについて、どちらを選ぶべきなのかとあわせて解説しました。

旅館業法と民泊新法、特区民泊には条件が設けられており、条件を守らなかった場合は法律違反となるため罰則の対象となります。

それぞれの法律には異なるポイントが多数あり、場所や条件によっては民泊として運営ができない可能性があるため、申請前に確認しておきましょう。

民泊を運営する際は、開業予定エリアがどのようなエリアなのか、民泊ができるエリアなのかを確認しておきましょう。

 

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大阪民泊清掃代行編集部

【民泊運営専門家】榊原 啓祐(さかきばら けいすけ)
ハウスクリーニングや壁紙再生事業でフランチャイズ本部事業等を立ち上げ、僅か5年で400店舗以上を出店。民泊事業には2015年8月に参入し、現在では民泊運営と共に、リゾート地での貸別荘もスタート。ハウスクリーニングの経験から、民泊清掃の第一人者でもあり、これからの民泊業界を牽引する若き経営者。

【民泊運営アドバイザー】田尻 夏樹(たじり なつき)
バチェラー3に出演。温泉ソムリエの資格を持ち、観光系インフルエンサーとしての経験から宿泊業、民泊業に参入。 地域の魅力やおすすめスポットを発見し、快適な滞在に関する情報の発信も。